宗谷岬(最果て紀行#3)

9月7日、雨である。8時過ぎ、宗谷岬へ向かうバスに乗った。席はすぐー杯になり、立ち席の乗客もでてきた。ほとんど大学生の若者である。観光客の若者が大勢乗っている路線バスは初めてである。それだけ、最北端は若者に人気のあるところなのだろうか。
若者に限らず、人には「最果てまで行ってみたい」という願望があるように思う。行き着くところに行ってみたい、と思うことがある。何故なのか。はっきりした事は分からない。でも、「最果て」というものには何か意かれるものを感ずるのである。
飛行場を過ぎ、右には原生花園が、左には海が静かに波を打っていた。まわりには何もなかった。草原と海、人工物は道路のみ、除雪用の道路存在位置を示す矢印のボールと電柱が道に沿って先まで続いていた。
稚内駅から約1時間、宗谷岬に到着した。外は雨が霧のように降っていた。気温15℃。みやげもの店のスピーカーからは宗谷岬の歌が流れ、背後にはソ連のバルチック艦隊の通過を監視したという望楼が往時を伝えていた。
北緯45度31分、ここが日本の最北端である。
行きつくところまで来た。「日本最北端の地」と刻まれた碑の脇で海を眺めた。何ともいえない空虚感が心の中に流れていた。「最果て」、それは終わりを意味する言葉である。僕の北への旅は、今、終わりを告げたのであろうか。
これは、一つの区切りである。これから、また新たな旅が始まるのである。海に片手をつけた。とても冷たい水だった。遥か遠方を眺めたが、樺太は見ることができなかった。


宗谷岬、北の最果てである。北緯45度31分
稚内駅から荒涼とした原野の中を走ってくると、宗谷岬に到達する。天気の良い日には遙か彼方に樺太の姿を見ることができるという。隣のみやげ物店からは宗谷岬の歌が流れていた。

ベニヤ原生花園の湿地帯