春の只見線(雪と桜の車窓・その1)会津柳津→小出【会津考察#58】

会津若松駅に停車中の只見線
只見線の位置図(国土地理院地図を元に作成)

 只見線は会津若松駅を起点として小出駅まで,福島県会津地方と新潟県魚沼地方を結び,中山間地の自然の中をゆっくりと走る,延長135.2kmのローカル線である.

 区間によっては1日に3本しか走っておらず,さらに列車の接続を考えると,全線乗り通すには極めて難易度の高い究極のローカル線であると言える.

 それ故に,昔ながらの生活や美しい自然の景色を見ることができ,時間と効率を追い求める現代において,このゆっくりと流れる車窓を眺めながら,只見線を旅するスタイルは,至極贅沢な旅であると言っても過言ではない.

 日本有数の豪雪地帯である.春になると待ちわびていたように,植物や動物たちが一斉に活動を始める.今年(2022年)の冬は大雪に見舞われ,まだ積雪が残っている.田子倉では雪が見られ,柳津では桜が咲いているのである.

 そんな只見線に乗ってみました.車窓からの風景などをお楽しみください.


朝の柳津駅ホーム.今朝は小雨の降る天気だったが,ホームの桜は満開で風に吹かれて花びらが舞っていた.7時04分発会津川口行きの列車を待ちます.(会津若松駅は6時05分発です)

 柳津駅前は桜の名所である.C11-244型の蒸気機関車(SL)が静態保存されている.

 柳津駅からは3名の乗車だった.ひとりは旅人,もう一人は高校生である.無人駅なので車掌さんから切符を購入するが,ローカル線でもSuicaでの精算ができるのは素晴らしい.さすがJR東日本!といったところである.

 小出駅では折り返しの列車まで時間が空いている.時刻表を開いてみると在来線で長岡まで往復できることがわかった.今日は長岡まで足を伸ばしてみることにした.

 6時37分に宮下駅に到着した.交換列車を待つために10分ほど停車する.駅舎に向かうためには急な階段を降りて線路を直接渡る.懐かしい施設である.

 只見線は1971(昭和46)年に全線開通して,今の形になった.

 まず,1926(大正15)年に会津線として,会津若松ー 会津坂下間が開業する.続いて,会津柳津までが1928(昭和3)年に,会津宮下までが1941(昭和16)年に開業する.
 そして戦後,会津川口まで1956(昭和31)年に延伸開業するが,会津川口から先は,水力発電用ダムの建設のための貨物専用鉄道として電源開発(株)により建設され,1957(昭和32)年からは貨物専用の輸送を行った.この区間で営業旅客するのは,1963(昭和38)年からとなる.

 一方,新潟県側は只見線として,1942(昭和17)年に小出ー大白川 が開業する.そして,福島県との県境(大白川ー只見間)が開通したのは,1971(昭和46)年8月29日.この日を境に,小出ー大白川間の只見線の名称を,会津線と呼んでいた会津若松-只見間にも適用して,新たな只見線が誕生した.

 この日からの「おかげさまで只見線開通50周年」なのである.

 宮下駅を出てトンネルを抜けると,パッと只見川の視界が開けて早戸駅となる.ここは霧の幻とかいて霧幻峡(むげんきょう)と呼ばれ,川霧が幻想的に発生して人々を魅了する.
 今日は残念ながら霧は出ていないが,霧幻峡では,対岸の三更(みふけ)地区から出ていた渡し舟が再現され,観光舟として乗ることができる.写真右側はその舟付き場(護岸)となっている.

 早戸駅から水沼駅にかけて,左側に国道と只見川が併走する区間がある.車窓からだと気がつかないが,ここの道路には工夫が凝らされていて,車が時速50km/hで走るとカントリーロードのメロディーが流れる.
 夏だと窓をあければメロディーが聞こえてくるのかもしれない.

まもなく細越橋梁を渡る.8径間連続コンクリートアーチ橋.

 そして,メロディーロードが終わるところで「細越橋りょう」を渡る.8径間の連続コンクリートアーチ橋で,1939(昭和14)年に竣工.選奨土木遺産として土木学会から認定されている.

 只見線には数々の土木遺産がある.選奨土木遺産とは,土木遺産の顕彰を通じて歴史的土木構造物の保存に資することを目的に公益社団法人土木学会が認定する制度で,只見線鉄道施設群として,2021(令和3)年9月17日に認定された.

 認定された施設は16橋梁と1トンネルで,施設名は次のとおり.
●橋りょう
 大川(会津若松市)
 宮川(会津美里町)
 滝谷川(柳津町・三島町)
 第一只見川、第二只見川、大谷川、阿寺沢、第二左靭、山中沢、第三只見川(三島町)
 細越、第四只見川、第五只見川、第二西谷(金山町)
 第八只見川(只見町)
 第四平石川(新潟県魚沼市)
●トンネル
 六十里越(只見町・魚沼市)

 上井草橋が見えてくると,まもなく終点の会津川口となる.今日は風もなく水面が穏やかで,逆さまに橋の姿が写っていた.

 会津川口駅から只見駅までの間は,2021(平成23)年の新潟・福島豪雨による災害により橋梁が流され,代行バスによる運行となっている.今年(2022(令和4)年)の秋に全線再開通を控えており,代行バスの運行もあと僅かとなっている.

 只見町に入ると,まだまだ雪が残っている.天気も悪くて霧が立ちこめており,春の陽気まで「まだまだ」といった感覚になる.写真は叶津川橋梁.カーブを描きながら叶津川を渡っている.そして代行バスは9時05分,只見駅に到着した.

 駅の待合室には,暖かい色合いの只見町インフォメーションセンターがある.ここで只見周辺の観光情報を入手することができる.
 駅前には,会津鉄道の会津田島駅までを結ぶ定期路線ワゴン「自然首都・只見号」が出発を待っていた.只見駅前9:10に出発すると田島駅で乗り換えて,東武鉄道の浅草駅に14:15に到着する.東京から只見へは,東武鉄道の特急を利用するという方法もあることに気がついた.

 只見駅9時30分発の小出行き.次の大白川駅までは29分間ノンストップで,長いトンネルを走って行く.田子倉トンネルは約3.7km,六十里越トンネルは約6.4km,福島県から新潟県へ,県境をゆっくりゆっくり走る.

 田子倉トンネルと六十里越トンネルの間に,少しだけ外を走る明かり部がある.田子倉はまだまだ残雪が多い.
 写真の建物は田子倉無料休憩所.夏のみの開設だが,24時間利用可能で簡易水洗トイレがついており,浅草岳の只見沢登山口の近くとなっている.昔は近くに田子倉駅があったが今は廃止されているため,この無料休憩所に只見線から降りて行くことはできない(只見駅から歩いて行けば別だが・・・).

 10時41分,上越線の小出駅に到着した.
 折り返し只見行きの列車は13時15分発であり,約2時間30分ほど時間が空く.時刻を調べてみると,長岡駅まで往復できる電車があり,約40分ほどの時間の内に昼食をとれる.長岡駅で昼食をとって戻ってくることにした.

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