スタートまで[阿武隈川カヌー駅伝大会物語#1]

福島県中通りを流れる阿武隈川.西白河郡西郷村を源流として白河市・郡山市・福島市と福島県内を縦断し,宮城県の亘理町で太平洋にそそいでいる.「川に親しみ,川との触れ合いを通して自然のすばらしさや大切さを改めて再発見し,阿武隈川の舟運の歴史を偲び巡りながら,上流から下流までの人々の交流の輪を広げる夢を託す」という趣旨で,第1回阿武隈川カヌー駅伝大会が開催された.(主催:阿武隈川サミット実行委員会(事務局:福島市役所))
スタート地点は福島県福島市のわたり水辺の楽校と呼ばれる河川敷,約5~12kmごとに設けられた8つの中継地点でタスキをつなぎ,宮城県亘理町の船着場まで74.9kmの区間を2日間に渡ってタイムを競う大会である.全国的にもカヌーの駅伝大会は珍しいという.
参加チームは各沿川市町村の住民などで構成された16チームあり,我々も「チーム山土(やまど)」というチーム名で参加することになった.(私はサポート隊で車の提供とドライバー,そして取材広報!?(つまりHP作成)という役目を担った)
無事,ゴールまでたどり着けるのか!物語の始まりです.

撮影日:2007(平成19)年9月29日~30日開催


1.プロローグ

それは,携帯電話への一通のメールから始まった.
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日付:2007,07,23
件名:協力依頼m(_ _)m
内容:お願いがあります.・・・9/29,30の土日に第1回阿武隈川カヌー駅伝(県庁前~河口)があります.1チーム最低7名が必要となります・・・初心者でも全然OKです!選手じゃなくて,サポートでもOKです! 皆様のご協力をお待ちしております.
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メールの送信者はカヌーやラフティングの経験のあるI氏だった.メンバーに一斉送信をしているらしい.このI氏からは度々週末のお誘いメールが来ており,本当ならば断るときもきちっと返信するべきだが,10年前の職場からつきあいの続いているメンバーの一人であり,気心の知れた仲間でもあり,「また,いつものお誘いメールか.ほっとけばそのままお流れになるだろう!」と感じ,そのままほったらかしにしておいた.
そして,その1週間後,再びメールが入った.
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日付:2007,07,29
件名:お願いですm(_ _)m
内容:BANCHANさん,9/29,30のカヌー駅伝ご協力頂けないでしょうかm(_ _)m カヌーには乗らないで結構です.車回し等の応援をお願いしたいのですが・・・お願いですm(_ _)m
今のところ,F氏,G氏,E氏,N氏と私(I氏)の5名です.あと2名必要なのですが・・・BANCHANさんとN氏の友人のT氏にお願い出来ればと思っております.
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m(_ _)mマークが3つも入っていた.そしていつになく丁重な文面.どうやらこれは本気らしい.サポート隊として車の提供とドライバー,そしてメンバーの写真を撮影する広報担当として,私も阿武隈川カヌー駅伝大会にエントリーすることになった.

2.練習を経ていよいよ当日

今回のカヌー大会は,プロの競技というよりは,全くカヌーを経験したことのない人も対象としている.そのため,未経験者には事前に1日間の練習を行ってから参加することとなっている.練習は,スタート地点から第1区間の手前までの区間で行った.
カヌーには3人乗り込んで,パドルと呼ばれる水を掻くための漕ぎ棒を持つ.パドルは水を掻くブレードが1つだけついたシングルパドルを使用する.一番後ろの人は「舵取り」といって,カヌーの方向性を掌る役割もあって,それぞれがバランスよく漕いでいくことが求められている.練習はなんとかこなし,本番の当日を迎えることとなった.

福島県庁を背景にスタートを待つカヌー達

大会参加の受付テント

漕ぐための道具・パドル シングルタイプ

盛り上げグッズ・鳴り物の「笛」

いよいよ大会当日,秋晴れとなった.気温も暖かく,絶好のカヌー日和である.我々チーム山土のメンバーは,土休日は無料開放される福島県庁前駐車場に一旦集合し,移動車に乗り換えて,スタート地点である「わたり水辺の楽校」へ向かった.
受付を済ませたあと,貸与されるパドル,ライフジャケット,そしてなぜか応援グッズである鳴り物の「笛」も手渡され,出発への準備を進めた.
さて,当日集まった7人のチーム山土(やまど)のメンバー達.かつての職場で苦楽を共にした若者(当時)集団であり,私が最年長の部類に属している.集合時間は朝8時とあって,みんな目が充血しており,顔が青白く,冴えてない様子.はっきり言って,全然気持ちが盛り上がっていなかった.
「結局,誰も参加者がいなくて,お流れになると思っていたのに~」
「俺なんか,名前貸してくれって言われただけなのに,こんなことになっちまったよ~」
「残業続きで,大会に参加する体力がないんだけど・・・・・」
みなさん,ブーブーのご様子.カヌー経験者は,チームリーダーのI氏のみ.彼だけは,朝からテンション高く張り切っていた.それでも,これだけ正直に意見が言い合えるのも,気を遣わなくていい気心の知れた仲間という証.何だかんだ言っても,ジャージに着替えて現地までやってくるのだから,チームメイトとはありがたい,ありがたい(I氏に代わって代弁).

さて,競技について簡単に説明すると,カナディアンカヌーを3人一組で漕ぎ,駅伝方式でタイムを競うタイムトライアルレースである.1日目は福島市の「わたり水辺の楽校」をスタートし,途中の中継地点で駅伝形式のリレーを行って,2日目の亘理船着場を最終ゴールとするものである.駅伝形式といっても,途中の中継点では一旦カヌーを陸に揚げて全艇一斉再スタート方式を採用し,タイムを集計していき最も少なかったチームが優勝ということになる.
中継地点は全部で8カ所,合計9区間あり,1日目は宮城県角田市の角田船着場までの6区間,2日目は角田から亘理までの3区間となっている.1区間あたりの距離は5.1km~12.5km,1時間から1時間半程度となっている.リレーのタスキとして,ペットボトルに入った「阿武隈川源流(福島県西郷村)の水」を河口まで繋いで運んでいく.

参加チーム数は全16チームである.チーム名を紹介する.

①西郷・白河源流チーム ②玉川カヌークラブ ③買いましたカヌーチーム ④チーム大玉 ⑤アウトドア倶楽部 ⑥安達ファイヤーズ ⑦UFOの里飯野町 ⑧阿武隈OYAG’Z ⑨チーム山土(やまど) ⑩福島市役所R&Sスポーツ同好会 ⑪CITY.伊達 ⑫Team SHIBATA ⑬亘理町 ⑭がんばろう仙台 ⑮Team南 ⑯ふぐすま転覆隊

それぞれ個性的なネーミングで面白い.沿線の住民や自治体関係者,大学の学生チームなど,多彩な顔ぶれとなっている.

プラカード

タスキとなる「阿武隈川源流の水」

スタート間近 コースの最終確認

チームリーダーより連絡事項

スタート前の写真 みんないい笑顔が見られます
(悪いことはしていませんが,プライバシー保護のため目隠しをしています)

3.開会式とスタート

さて,開会式となった.福島市長や国土交通省,福島県など来賓からの挨拶が続き,そして各チームの紹介となった.司会者から順番にチーム名などが紹介されていき,いよいよ9番目,我々の番となった.

「続きまして,チーム山土(やまど)です.・・・・正直言って,このチーム名,何が言いたいのか分からない名前なのですが,とにかく,かつて職場が一緒だったメンバーだとのことで,福島市からの参加となっています.皆さん独身だそうで,優勝した暁には独身貴族を卒業することを誓うとのことです.」

司会者から痛烈なパンチ! 確かに,「山土(やまど)」という名前,分かる人にしか分からないチーム名である.これはかつての職場の略称なのである.世間的にはとりあえず,山と土とを愛する自然派集団ということにでもしておこう.

開会式 福島市長ごあいさつ

タスキの授与(河口まで繋げるか?)

まもなくスタート! 競技者全員集合

第1競技班 いよいよカヌーに乗り込む

いよいよスタートの時がやってきた.スタートの合図は,いつの間にか国道4号線の大仏(おさらぎ)橋に移動していた福島市長が,白い旗を振ったらスタートとなる.全16艇,緊張の一瞬である.太平洋の河口に向かって,阿武隈川カヌー大会の始まりである.
そして,スタートの旗が振られ,全艇一斉スタートをきった.チーム山土はゼッケン9番,無事にゴールまでたどり着けるのか.

あとは合図を待つのみ

大仏橋から市長が合図を送る

スタート直後  チーム山土は左に傾いているような・・・!?