メキシコシティーのメトロ 【地下鉄】
メキシコシティーの地下鉄は非常に面白い! いかにもメキシコらしいのである.メキシコシティーに来たならば,是非何回か乗ってみることをお勧めする.駅に時刻表などは貼っていないが,次から次へと電車はやってくる.両数も多く,9両くらいつないでいたであろうか.スリが多く,場合によっては取り囲まれて荷物を取られる事があるというが,地図を広げたり「ぼけーっ」としたりしないで隙を見せない行動をとってれば,それほど神経質になる必要はないと思う(夜間は別).結構混雑するので,むしろドアに挟まれて引きずられないようにすることのほうが大変である.
1.ゴムタイヤとレールの軌道で「いいとこどり」の凄まじい性能を発揮
メキシコシティーの地下鉄は,外側にゴムタイヤがあって,その内側に車輪がついている.日本では,レールの地下鉄かゴムタイヤの地下鉄か,どちらか一方の方式のみであるが,この両方の長所をとりいれているのが,このフランス製の地下鉄である.
レールは車両の方向を導く役割を果たし,ゴムタイヤは摩擦抵抗を増して加速減速を高める役割を果たす.このゴムタイヤがついていることが,メキシコシティーの地下鉄を「くせもの」にしているのであり,凄まじさを演出しているのである.
加速は自動車並みの高加速であっというまにスピードが出る.そして,ブレーキも急で握り棒につかまっていないと,足を広げているだけでは耐えられないほどである.
ラッシュ時には,赤信号でしょっちゅう途中で停車するのであるが,どういうわけか日本のように徐々にブレーキをかけて止まっていくのではなく,いきなり「プシュっ!」という空気の音とともに,一気に非常ブレーキではないかと思われるほどの急ブレーキをかけて停止するのである.この時は,両手で握り棒をつかんでいないと吹っ飛ばされそうになる.ゴムの焼けるような臭いがして,再びすぐに動き出す.このワイルドさは乗って経験してみないとわからない! とにかく運転が粗い地下鉄である(「自動車」では運転が粗いと聞くが,「電車」で運転が粗いとはあまり聞かないような気がする).
2.駅でドアの開いている時間は超短い! 乗務員次第!?
ドアの開いている時間には乗務員による個人差があるようだが,概してドアの開いている時間は短い.混雑していて乗り降りが済んでいないのに,容赦なくドアを閉めてしまうのである.開いたと思ったら,すぐに発車ブザーがなってドアが閉まってしまうのである.ひどいときは,降りている人(乗っている人ではなく降りている人である!)が済んでいないのに閉まるときもある.
また,ドアが故障しているのか,乗務員が間違ってすぐ閉めてしまったからなのか,開いたと思ったら1秒で閉まってしまい,みんな挟まれているときもあった(さすがにこれは再びドアが開いたが・・・).
メキシコシティーの人は,このことを十分に周知していて,地下鉄の乗降の時だけはドアに挟まれないように素早く行動している.そして,途中でドアが閉まりかけたときには,躊躇することなく直ぐに車内にいる男の人がドアを引っ張っていてくれたりする(あまり期待はしないように!女性にはやってくれるが,男性にはやってくれない).そのため,中央のゴムの部分(写真オレンジ色の○印)がボロボロになっている車両が多い.僕も何度かドアに挟まれたため,当たったところの腕が痛かった.
どう考えても,何人かはドアに挟まれて引きずられる事故があると思われる光景である.

3.「物売り」と「音楽流し」が乗ってくる賑やかな車内
なんといっても,最もメキシコシティーらしいのは,これである.
ひょこっと乗ってきて,ドアが閉まり発車すると,いきなり大声で物売りを始める.物売りといっても,僕が見た限りでは押し売りされることはなく,物が欲しい人は合図を送ってN$5かN$10を払っている感じである.いい表現をすれば「車内販売」である.商品は,キャンディー,ファイル,ボールペン,雑誌,占い本,電池など,ありとあらゆる物があったが,これらをまとめてワゴンなどで売りにくるのではなく,必ず1人で1商品のみを売りに来るのである.商品を高くかざして,スペイン語で大声で叫びながら車両を歩いていく.二人以上でバッティングすることはなかった.
そして,物売り以外にも「音楽演奏の流し」が乗ってくるのである.いきなりギターを弾き出して,マリアッチのような歌を歌いながら車内を歩いていく.パーカッションをもって3人トリオのリズムを刻んでいく.笛を吹いて自作のカセットを売り歩く・・・.車内の乗客はクールなもので,誰一人として拍手をするものもいなければ,見て見ぬふりをしている感じである.混雑していてもギターを縦にして渡り歩いていくのであるから,たいしたものである.観光客の僕としては,大いに盛り上がって「グラーシアス!」などと叫びたいところであるが,「じゃぁ,お金をちょうだい」などと言われるのも困るので,僕も見て見ぬふり! しかし,心の中では大いに拍手喝采,「さすがはメキシコだ!」と叫んでいた.
1~2駅で次の車両へ移っていく.外国の地下鉄は車両と車両との間は人が行き来できるようになっていないので,駅に着くと,隣の車両へと渡り歩いていく.
4.チケット(切符)
すべて窓口で購入する.全区間均一料金でN$2(≒20円).日本の公共交通機関に比べると破格の安さである.切符を買うときは,1枚の時は「ウノ(UNO・スペイン語で1の意)」といって買っている.切符は乗るときに自動改札機に通し,そこで回収される.出るときは,出口(SALIDA)の改札口を通って外に出る.飛び乗って無賃乗車をするのを防ぐため,改札機の脇には必ず警備員が立っている.
改札口(Universidad駅) 大きな壁画がある